仙台家庭裁判所 昭和40年(少)1823号 決定 1965年11月01日
少年 T・K(昭二三・一一・五生)
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
一 非行事実
少年は中学校三年頃に、友人の話や、又雑誌等から見聞して性に対する知識と興味を深めていたが、さらにすすんで自ら異性との関係を経験してみたい欲求を高め、これを実行に移すことを企て、
(一) 昭和三八年一一月の午後五時頃、仙台市○町○○×××の△○○園前私道において、帰校途中の住所氏名不詳の中学校女生徒を、その後から首を絞めてその場に押し倒し、その抵抗を抑圧して姦淫しようとしたが、さわがれてその目的を遂げず、
(二) 昭和三九年四月○○日午後五時ごろ、同市○○○○○△△団地入口ゴミ捨場附近の崖で、帰宅途中の中学一年生○田○子(当一二歳)を二米下の崖底につき落し、ころげ落ちた同女の首を絞め、その抵抗を抑圧して姦淫しようとしたが、さわがれてその目的を遂げず、
(三) 昭和四〇年七月○日午後五時すぎごろ、同市○○○○○△の△△○浦○男方西方二〇米の雑木林内において、帰宅途中の○浦○子(当一四歳)を背後から首を絞めつけて東南方傾斜下八三米の雑木林に引張り込み、同女を押し倒して押えつけ、口腟内に所携の手拭を押し込み、頭・顔を布袋で覆い、素裸にしてその抵抗を抑圧し同女を強いて姦淫し、因つて同女に全治一週間を要する口周浮腫状腫、頸部全周にわたる発赤、処女膜裂傷の傷害を負わせその後更に抵抗を抑圧されている同女に対し金は何処にあると脅迫し同女より現金一〇〇円を強取し、
(四) 同年九月○○日午後五時二〇分ころ、同市○○町○○○△△寺裏山の墓地附近において、帰宅途中の中学校一年生○坂○○江(当一二歳)を背後から首を絞めつけ、口腟内にハンカチを押し込み風呂敷で猿ぐつわをかけて押し倒し、その抵抗を抑圧し、ズロースを下げて姦淫しようとしたが、子供のため姦淫を中止しその目的を遂げず、さらにそのあと押し倒し押えつけて反抗を抑圧している同女に金を持つているかと脅迫して金員を強取しようとしたが可哀想になりこれを中止して金品強取の目的を遂げず、
(五) 同年九月△△日午後九時頃、同市○○○○中○○の×○山○和寮の私道において、通行中の○生○○エ(当二三歳)より金品を強取しようと企て、追いかけて行き前記○和寮そばの運動場附近で同女の頸部を背後から両手で絞めつけ金を出せと脅迫し、同女を其の場に押し倒し、その抵抗を抑圧し、同女から現金八、〇〇〇円在中の手提袋一個を強取したが、その際前記暴行により、同女に対し全治一週間の右頸部挫傷、左頸部、両肘部両膝部擦過創の傷害を負わせたものである。
二 適用罰条
(一)及び
(二)の事実刑法第一七七条、第一七九条
(三)の事実同第一八一条、第一七七条、第二三六条第一項
(四)の事実同第一七七条、第一七九条、第二三六条第一項、第二四三条
(五)の事実同第二四〇条
三 処遇
少年は○○大附属小学校、同中学校を経て昭和三九年四月、仙台市立○○高校に入学し、現在同校二年在学中のものであり、学校内では学業成績は不振ながら本件発覚に至るまでとくに問題行動もなく経過していたものである。
家庭は経済状態も良好で、父母と弟一人があり、父母ともに教育に熱心であるが、父は勉強第一主義的厳格な教育方針をもち、一方母は熱烈なクリスチャンで少年を過信する傾向にあつて少年の生活の実態について盲目的であり、両親の少年に対する教育方針は全く一貫性がなく、少年はとくに父を敬遠し、最近は話もあまりし合わないで生活している傾きがあつた。
少年の性格は、一般的には積極性、自主性に欠け、内攻的であり、又口や動作も重く協調性に乏しく、幼少からの過保護により社会性が年齢相応には発達して居ない。しかも学業不振であるところから弟にも劣るとの自己卑下と圧迫感がわだかまり、これが又父に低く評価されるという損傷感となつて、自分ではどうにもならない焦操と将来の見通しの暗さえの緊張が、勉学、運動その他明るい生活面への発散も出来ないまま性の刺激をきつかけに本件非行によつてその発散を図る結果を招来したものと考えられる。
少年の上記のような人格的偏りと家庭状況(但し父母は、本件を機に少年の取扱いが適切でなかつたとの反省を深めている)、そして本件非行の重大さを考えると、本少年は、この際中等少年院に収容して矯正教育を施し、その間保護者にも少年に対する適切な補導方針を樹てさせ、もつて少年の再犯危険性を除去し社会適応を期するのを相当と思料する。
よつて少年法第二四条第一項第三号にもとずき主文のとおり決定する。
(裁判官 鎌田千恵子)